十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍は、胃のすぐ下にある十二指腸の粘膜が、胃酸や消化酵素の影響で深く傷つく病気です。

 

胃潰瘍と似ていますが、空腹時や夜間に痛みが出ることが多いのが特徴です。

 

以前は再発を繰り返す慢性病とされていましたが、ピロリ菌除菌や強力な胃酸抑制薬によって、現在では根治が期待できる疾患になっています。

最も大きな原因はピロリ菌感染です。

 

幼少期に感染し、長年にわたって炎症を起こすことで、胃酸分泌が過剰になり、十二指腸の粘膜が傷つきやすくなります。

 

また、NSAIDs（鎮痛薬・解熱薬）の長期使用、喫煙、ストレス、過度な飲酒なども発症に関与します。

 

胃潰瘍と比べて、十二指腸潰瘍は胃酸過多型の人に起こりやすい傾向があります。

典型的な症状は上腹部（みぞおち）の痛みです。

 

特に空腹時や夜中に痛みが出て、食事をすると和らぐことが多いです。

 

その他、胸やけ、げっぷ、吐き気、食欲不振などを伴うこともあります。

 

出血がある場合は黒色便や貧血がみられ、重症例では吐血することもあります。

 

症状が一時的に改善しても再発することがあるため、根本原因の治療が大切です。

上部消化管内視鏡検査（胃カメラ）が最も確実な診断法です。

 

内視鏡で十二指腸球部などを観察し、潰瘍の大きさ・深さ・出血の有無を確認します。

 

胃潰瘍と同様、悪性疾患（がん）との鑑別が必要な場合には組織検査（生検）を行います。

 

同時に、ピロリ菌の検査（呼気・便・血液・生検法）を行い、陽性であれば除菌治療を計画します。

治療の中心は、胃酸分泌を抑える薬とピロリ菌除菌療法です。

 

プロトンポンプ阻害薬（PPI）やカリウムイオン競合型酸分泌抑制薬（P-CAB）を用いて胃酸の分泌を強力に抑制し、潰瘍の治癒を促します。

 

ピロリ菌が陽性であれば、抗菌薬2種類と胃酸抑制薬を1週間服用する「三剤併用除菌療法」を行います。

 

成功率は約90％と高く、再発防止効果が確認されています。

 

出血を伴う場合には、内視鏡的止血術で出血部位をクリップや凝固法で処置します。

 

NSAIDsの長期使用が原因の場合は、薬を中止または変更し、必要に応じて胃粘膜保護薬を併用します。

 

生活面では、禁煙・節酒・ストレス軽減・規則正しい食事が再発予防に役立ちます。

十二指腸潰瘍は再発を繰り返す傾向がありますが、現在はピロリ菌除菌によって根治が可能になっています。

 

空腹時や夜間の腹痛、黒色便、吐血などの症状がある場合は早めの内視鏡検査が必要です。

 

当院では、苦痛の少ない内視鏡検査を行い、診断・原因治療から再発予防まで丁寧にサポートしています。