肛門周囲膿瘍・痔瘻(痔ろう)
肛門周囲膿瘍・痔瘻(痔ろう)
痔ろうの主な原因は、下痢などによって肛門の組織に細菌が入り込むこととされています。歯状線には、「肛門陰窩(こうもんいんか)」と呼ばれる上向きのポケットがあり、粘液を出す「肛門腺」と呼ばれる腺があります。小さなくぼみなので、通常はここに便が入り込むことはありませんが、下痢をしていると、便が入りやすくなり、肛門腺に大腸菌などの細菌が入り込むことがあります。この肛門腺に大腸菌が入った際に、付近に傷があったり、体の抵抗力が弱っていたりしていると、感染を起こして化膿し、肛門周囲膿瘍になります。さらに肛門周囲膿瘍が進行し、肛門の内外をつなぐトンネルができると、痔ろうとなります。
一回の肛門周囲膿瘍で切開排膿をして膿を出すだけで痔ろうに進展するというケースは少なく、排膿だけで治癒し、繰り返さないのであれば、それ以上の治療(手術治療)は必要ありません。 しかし、痔ろう・肛門周囲膿瘍を繰り返す場合には、外科的治療が検討されます(活動性のある痔ろうを長年にわたって放置しておくことで、まれではありますが、痔ろうがんが発生したり、痔ろうが多発したり、肛門が狭窄することがあります)。 痔ろうには、その位置やタイプにより、さまざまなバリエーションがあります。そのため、手術の術式も多種類があり、ケースごとに術式が選択されます。以下に代表的ないくつかの手術の方法を示します。