【80代男性の内痔核(いぼ痔)】初めてのジオン注射…「痛くなかった!!!」
- 2022年4月28日
- 院長コラム
目次
「おしりの悩み、私が解決いたします!!」
おしりの悩みを持っている方!
私たちにお任せ下さい!
年齢を問わずお尻に関する悩みは中々他人には打ち明けにくいものです。たとえ家族でも、一緒にいるパートナーでも恥ずかしい、、それはお医者さんに対しても同じです。自分で抱え込んでしまい症状が悪化して、どうしようもなくなり病院に駆け込む、、そんな患者さんを数多く診察してきました。もっと早く相談してもらえたら苦しむことなく治療できたのに、、私は心の中でいつもそう思っています。
今回は肛門外来でもっとも多い痔核についてのお話です。
内痔核ってなに?
診察する前に書いていただいた問診票のなかで最も多い症状は
この2つが多く、これらの症状で悩んでいる患者様が多い事を表しています。
痔核(いぼ痔)には内痔核(肛門の内側にできる)と外痔核(肛門の外側にできる)がありますが今回は内痔核のお話です。
皆さんは誰でも内痔核になる可能性がありますので排便習慣には十分気を付けて頂きたいと思います。
何十年も痔に悩まされた80代男性
痛いお尻に悩み、やっとの思いで来院
80歳代男性がご夫婦で来院されました。何十年も痔で悩まされていて、最近では肛門から痔が脱出して痛みもあり、家から出ないことも多くなった事もあり座ることさえ出来ないとの事でした。
お話を伺うと「これまで何回も手術や薬の治療をしてきたがすぐに痔ができ、立って歩くのが怖い」とおっしゃっています。便秘ではなく下痢もしていないとのことで排便習慣を改善すれば治るという訳でもなさそうです。
内痔核は痔そのものの治療も大事ですが下痢する頻度が多い方や、便秘で硬い便を踏ん張って出す習慣のある方は排便習慣も改善しないとすぐに再発してしまうので排便習慣をヒアリングするのは肛門外来では非常に大事になってきます。
肛門鏡(肛門から挿入して肛門を診察する器材)で肛門内を観察すると4時、7時、11時方向(時計の数字になぞらえた肛門のどの部分にあるかを表す)の最も出来やすい場所に小指大の内痔核をみとめうっ血していました。
診察時は肛門からは脱出していませんでしたが、排便時に脱出してくることは容易に想像できるものでした。80歳と高齢ではありますが、まだご健康ですので痔が気になって外出すらできないというのは・・何とかして差し上げたい・・。
そんな思いで診察を終えました。
ひと昔前であればお薬の治療で治りが悪い患者様に対して痔核を切除する手術が一般的でした。うっ血した静脈叢を根こそぎ切除するので痔核はなくなりますが手術後の痛みがあることや、何か所か切除すると切除部位が瘢痕化するため肛門が狭くなることがあります。
私は治療歴を把握したうえで切らずに痔を治療するALTA注射療法(ジオン注)をお勧め致しました。
ALTA注射療法は2005年から開始された比較的新しい治療法で、硫酸アルミニウム水和物・タンニン酸(ALTA)を1か所の痔核に4段階に分けて注射し、痔核を直腸の粘膜に固定、退縮させることで痔核の脱出、出血、腫れを改善する治療法です。
患者様は「もう年だし手術はなあ~・・」「痛いのはもう嫌だなあ~・・」とあまり前向きではありませんでした。おそらく以前行った経験のある『切る手術』を思い出されていたのでしょう・・
「今の状態ではこれまでの治療歴も考慮して、薬で治療してもまた繰り返します。今の内痔核の状態はALTA注射療法の適応があります。以前行ったご経験がある切る治療法は手術後の痛みがありご入院もされてと思いますが、この治療法は注射による痛みや出血はほとんどなく、日帰り手術が可能ですよ!」
「痛みや出血がほとんどない?本当?」といい反応が返ってきました。
「今お返事いただかなくともいいです。今日は飲み薬と塗り薬を2週間分処方しますのでその間考えておいてください。パンフレットもお渡ししますので読んでおいてください!」
「2週間ね。分かりました。考えてまた2週間後に来るよ!」
予約表を渡すとご夫婦寄り添って診察室を出ていきました。
ついに、ジオン注射決意
外来2週間後・・・
今日は患者様1人で来院されました。
「先生、薬使っても治っている感じがしないよ!注射の治療やってもらおうかな・・」
「診察させてもらってよろしいですか?」
診察すると前回と同様に4時、7時、11時方向にうっ血した内痔核を認める。前回よりも若干腫れは引いてきている感じがあるがまだ時間はかかりそうである。
「まだ腫れはありますし、元気に外を歩けるよう注射の治療を行いましょう!」
「ありがとう!がんばるよ!」
ということで1週間後に手術を予定しました。
手術(注射の治療ですが手術に相当します)の同意書と鎮静剤の同意書にサインを頂き、一人でお帰りになりました。
何十年も抱えていた内痔核から解放!?
外来1週間後・・・
「今日はよろしく頼みます!」
体位をとり80歳という高齢者であるので、鎮静剤はやや少なめに投与しましたが すぐにお休みになりました。
今回は3か所の同じくらい腫れた内痔核があるため、3か所同時に行う方針としました。ALTA注射療法は投与量を間違わなければ1回で複数個所の内痔核に注射できます。
まず肛門鏡で4時方向の内痔核の治療にかかります。奥から1段階、2段階と順に針を静脈叢に入れます。注意点としては注射針を深く入れすぎないことです。直腸の壁にも筋肉の層があるのですが、この筋層まで針を入れて薬液を注入すると直腸潰瘍ができることもあるからです。4段階まで注入したら終了です。
その間、患者様はピクリとも動かずぐっすり寝ています。4段階の注入を終了したのち肛門に指を入れて5分程度、同部位をマッサージします。このマッサージが大事で薬液を拡散することで治療効果が高まります。
マッサージを終えると次は7時方向、11時方向にも同じ作業を繰り返します。痔の位置が変わるので同じ痔であっても見え方が変わってくるため、肛門鏡を出し入れして痔の状況を何度か見直し、注射部位をその都度確認することが必要です。
そうして患者様の手術は無事終了しました。出血もなさそうです。
鎮静から覚ますお薬を注入して間もなく患者様は覚醒してきました。
「手術終わりましたよ!」
「えっ、もう終わったの?全然わからなかったよ!痛くもない!」
そうおっしゃった後、リクライニングチェアーで気持ち良さそうにまたお休みになりました。
1時間程度、止血剤を入れた点滴をしているうちに完全覚醒されました。
「いやー先生、これで治るんだったらもっと早く手術してもらいたかったよ!」
「ありがとうございます」
明日また来院して診察する予定としました。
ALTA注射療法の一般的な治療経過は
注射直後:痔核に流れ込む血液が遮断され、内痔核そのものの縮小効果が見られます。脱肛する患者様はその程度が軽くなります。
1週間~1か月:痔核本体が次第に小さくなり、元の位置に癒着、固定して出血や腫れ、脱出が見られなくなります。
手術翌日・・・
「出血も痛みも全くないよ!なんかおしりにあるな・・という感じはあるけどなんともないよ!」
多くの患者様が注射後数日でおっしゃるのは「おしりになにかある感じ」と言います。縮小する過程で感じる変化ではないかと考えていますが実際はどうなのでしょうか・・。
診察するとまだ腫れていましたが炎症がおきるため全体的に粘膜が赤くなっています。出血はなく手術翌日の経過としては問題ありません。
「うまくいってますよ!何もなければ1週間後にまた診察させてください!」
手術後1か月・・・
「すっかり良くなったよ!お尻の違和感もなくなったし痛みも出血もない。何より脱出もしなくなったから外も歩けるようになったんだ。ありがとう!」
診察すると手術した3か所の内痔核はだいぶ縮小し腫れは引いている。
「少々肛門の外に出そうな感じにもなることがあるけど、 出てないから満足度は80%以上だよ。本当にありがとう!」
「本当に良かったです!また1か月後に診察させてくださいね!」
ということで診察室をあとにされた。幾分歩き方も手術前と比べて軽やかに見えました。
注射後の経過は1か月で完全な治療効果が出るといわれていますが、その後も定期的に診察させていただくようにしています。
最後に・・・
ALTA注射療法を以下の患者様は受けることが出来ませんのでご注意ください。
ALTA効果療法、ご興味ある方は是非高田馬場駅前メディカルクリニックへご相談ください。
高田馬場駅前メディカルクリニック
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院長 廣澤 知一郎
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