その出血、痔の可能性あり!?なかなか言えない肛門のお悩み解決します!
- 2023年8月14日
- 院長コラム
今回は「痔」についてのお話です。
肛門の病気の75%が痔と呼ばれる良性の疾患で、痔核(いぼ痔)、痔瘻(あな痔)、裂肛(切れ痔)の3つを指します。
当院でのこの3大疾患の受診割合は痔核が60%、裂肛が35%、痔瘻が5%位となっております。男女で比較すると痔瘻は男性に多い傾向があります。
痔以外の肛門の病気には、肛門周囲膿瘍など緊急で処置しないと敗血症(重篤な全身感染症)となる疾患もあります。
「痛くて座れません、、」と診察室に入るなり立っていらっしゃる患者様の多くが肛門周囲膿瘍です。
麻酔をして切開、排膿することにより施行後すぐに座れる位楽になります。
目次
痔のできる理由
私たち2本の足で直立歩行する人間では、肛門が心臓より低い位置にあるので下半身や肛門部分はうっ血しやすいからです。
排便そのものにしても、日常の生活の中の様々な事柄が便の性状(形)や排便の機会などに影響をきたします。
例えば食生活や飲酒、旅行などの環境の変化や、社会生活の規律やストレスで便の性状や排便タイミングが変化することを皆さまも経験されていると思います。
さらに便意があっても状況により、排便を我慢することもあります。
このように日常の排便という行為そのものが、肛門の様々な病気や症状の発生に大きく関連しています。
痔にならない排便習慣
「便意があった際に、軽いいきみで残便感なくすっきりと出る」のが理想的です。
お腹の中の便を全て出し切ることは不可能で、あくまで直腸にある便だけしか排泄できませんので、長時間強くいきんで便を出そうとすることや、便意が無いのにトイレに行き排便しようとすることは痔になる原因となります。
痔にならないポイント3つです。
○長時間いきまない
○便秘、下痢にならないようにする(これが難しいのですが・・)
○便を固くしない
排便習慣を改善する事は生活習慣を改善するのと同様に難しい事です。焦らずじっくり取り組む事が大事になります。
(痔核)いぼ痔
痔核は歯状線を境に内痔核と外痔核に分けられます。と言っても分かりにくいので簡単に言えば肛門の中にあるのを内痔核、肛門の外にあるものを外痔核と考えて下さい。ただ内痔核が肛門外に脱出している状況もありますが、指で肛門内に戻せれば内痔核と考えられます。
症状
出血、脱出、腫れ、痛みなどが主な症状です。
出血は、排便の時だけに認められるものでほとんどで通常痛みは伴いません。
痔核の強いうっ血が原因であるため、排便が終了するとともに出血はなくなります。
脱出は痔核の大きさと痔核のできた位置に関係して起きる症状です。
排便時に気付くことが多いのですが、運動や歩行、重いものを持つだけでも脱出する場合もあります。
治療
保存的治療
肛門病の治療で最も重要なことは、正しい排便習慣を理解し実践する事です。
十分な食物繊維の摂取(18~20g/日が目標)や水分摂取を心掛け、必要に応じて適切な薬を服用するようにします。
痔核の薬剤治療では、坐薬や軟膏、内服薬を使用します。
腫れや痛み、出血などの症状の改善に効果がありますが、4週間使用しても症状が全く改善しなければ治療方法を再検討します。
硬化療法(ジオン注、ALTA療法)
この治療は痔核に対して4段階に分け痔を固める薬液を注射する方法です。止血効果だけでなく痔核の脱出を持続的に治療できる方法で日帰りで行えます。
問題点として、効果には個人差がある事、合併症として発熱、直腸潰瘍、狭窄のリスクがある事です。
当院では出血、脱出でお悩みの患者様に、日帰りで行える硬化療法をメインに年間500例の手術を施行しております。
保存的治療にするか、手術をするかは患者様の病悩期間や病状、ライフスタイルに応じて決めるようにしております。
出血に対してはほぼ完治しますが脱出に関しては70%の方が一回の治療で治す事ができます。
「脱出」といってもその程度はさまざまであり脱出の大きい方は1回の治療で完治しない場合があります。
1回目の手術でその程度が小さくなり、2回目で完治する方もいらっしゃいますし、それでも脱出する方は結紮切除法をお勧めしております。
この事は硬化療法を施行する前に説明させて頂き、同意頂いた方のみ手術を施行しております。
手術療法
痔核結紮切除法
大きな内痔核やどのような痔核でも機能障害などを残さず確実に治療でき、再発が少なく、根治性の高い方法です。
この方法の問題点は、手術後の出血、痛みと狭窄です。
出血は0.3~3%位の頻度で、様々な原因で起こります。
痛みは鎮痛剤の服用でコントロールできます。
ゴム輪結紮法
専用のゴム輪結紮器を使用し内痔核を縛って壊死脱落させる方法です。
また入院治療が必要である患者様には治療可能な専門施設へ紹介させて頂いておりますので安心して受診頂けたらと思います。
(裂肛)きれ痔
肛門管上皮に縦方向の傷がついたもので、俗に切れ痔ともいいます。男女比は2:3で女性に多く20~40歳代に多くみられますが、小児の裂肛も稀ではありません。
症状
排便を契機に続く痛みが特徴で、短時間の軽い痛みが一般的です。
出血は少量で紙につく程度の事が多いですが、裂ける程度により便器が真っ赤になるほど出血する事もあります。
裂肛を繰り返すと慢性化し、排便するたびに痛みがしばらく続くようになってきます。
さらに裂肛が繰り返されると、裂肛は徐々に深く硬くなって(潰瘍化)肛門が狭くなります(肛門狭窄)。
狭くなった肛門にまた硬い便が通過することで裂肛は悪循環でますます悪化していきます。
潰瘍の外側には皮膚の突起(みはりイボ、皮垂)、奥側には肛門ポリープができることがあります。
治療
裂肛の治療は保存的治療が基本となり、慢性化させないことが大切です。
排便のコントロールを含む保存的治療が無効な場合や、慢性化した裂肛で、日常生活に支障のある狭窄症状をきたした場合や、脱出する肛門ポリープや大きな皮垂ができた場合に外科的治療適応となります。
(痔瘻)あな痔
肛門の中から肛門の外側の皮膚に繋がるトンネルのような「管」ができたものが痔瘻です。
痔瘻の大多数は、肛門周囲膿瘍という状態を経て痔瘻になります。
治療は手術など外科的な方法が主になります。
症状
肛門周囲の痛みを伴う腫れで、皮膚の発赤や発熱することもあります。
痛みの特徴は、排便に関係なく徐々に強くなっていきます。
膿瘍が肛門奥の痛みを感じにくい部位にできた時は、重苦しい痛み(鈍痛)や残便感、感冒のようなだるさや微熱程度のことが多く、診断が遅れてしまうことも少なくありません。
膿が出た後の痔瘻は、痛みは無く肛門周囲にしこりや、分泌物の出る孔ができることがあります。
治療
痔瘻を根本的に治療するには手術しかありません。
痔瘻の手術は、確実に治すことと同時に肛門の機能温存が大切です。
痔瘻は単純なものから複雑なものまでさまざまで、痔瘻の程度、瘻管が括約筋の中をどのように貫いているかなどで手術の術式が異なります。
手術術式には大きく分けて瘻管開放術、瘻管切除術、瘻管結紮療法の3つの方法があります。
瘻管開放術
当院では全瘻管を切り開く瘻管開放術を日帰り手術で行っております。
この術式は根治性に優れており、比較的浅く肛門括約筋の巻き込みが少ないと判断した痔瘻に適応があります。
肛門から深い位置より連続する瘻管である場合、瘻管を切り開いて肛門括約筋を切離してしまうと便もれやガスもれなどの排便障害を引き起こす事があるため、術式の選択は慎重に行う必要があります。
また複雑な痔瘻や瘻管切開術の適応がない患者様は専門施設へ紹介しております。
最後に
今回は「痔」に関して当院の状況も含めてお話させて頂きました。
肛門出血といっても痔が原因とはかぎりません。
若い方は「癌の訳がない」と思ってらっしゃる方もおられるかもしれません。
しかし、潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患の可能性があります。
また、40代以降の方は大腸癌の可能性もあります。
当院では初診時に痔からの出血か腸からの出血の可能性もあるのか判断して、状況により大腸カメラをお勧めしております。
炎症性腸疾患や大腸癌の見逃しは患者様に多大な影響を及ぼすからです。
「痔かな?」と思ったら是非当院に受診下さい。
肛門の症状は待ったなしです。
そんな患者様のために土日祝日も診療しております!
院長 廣澤知一郎
高田馬場駅前メディカルクリニック
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